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銀価格急騰の背景と今後の展望

シルバーのインゴッド
シルバーのインゴッド


はじめに:銀マーケットにいま何が起きているか

過去数カ月で銀の市場価格は急激に上昇しました。2025年初頭の1オンス=30ドル前後から、7月中旬には38ドル超まで高騰し、14年ぶりの高値更新が話題を呼んでいます。直近半年のチャートは明確な上昇トレンドを描いており、多くの投資家が「銀買い」のチャンスを探り始めています。

次章では、具体的な価格推移と節目となったイベントを振り返ります。


第1部:2025年前半の価格推移と節目


1-1 価格推移の主なポイント

  • 1月:年初来で14%上昇、1オンス=34.10ドルに到達

  • 4月上旬:30ドル台前半へ一時調整

  • 6月~7月:米関税・BRICS課税観測が後押しし、38.28ドルまで急騰

表1:2025年前半の主な価格節目

節目価格

背景イベント

1月末

34.10ドル

金利低下期待と機関投資家の買い増し

4月初旬

31.00ドル

米関税導入懸念後の調整

7月中旬

38.28ドル

米関税引き上げ・BRICS課税観測で需給ひっ迫懸念

次に、この急騰を支えた需要サイドの強力なトレンドを探ります。


第2部:銀需要の急増要因


2-1 産業用途の拡大

  • 太陽光パネル半導体層:2030年までに需要170%増加予想

  • 電気自動車(EV)の電気接点や大型バッテリー:導電材として不可欠


2-2 再生可能エネルギー分野

  • 太陽光発電の拡大:銀使用量は全産業需要の30%以上を占有

  • エネルギーストレージ向け電極材料:脱炭素化の鍵として脚光


2-3 伝統的用途も依然堅調

  • 宝飾・銀食器:インド・中東で高級需要復活

  • 医療・殺菌用途:パンデミック後も安定需要

表2:用途別世界銀需要構成(2024年)

用途

割合

太陽光パネル

32%

電子・EV部品

24%

宝飾・装飾品

18%

医療・抗菌

10%

その他(工業用途)

16%

続いて、供給サイドの制約と地政学リスクを見ていきます。


第3部:供給サイドの制約要因


3-1 鉱山生産の伸び悩み

  • 2025年の銀鉱山生産量は前年比+3%に留まり、需要増加に追いつかず

  • 新規プロジェクト遅延で回復に時間を要する見込み


3-2 リサイクル限界

  • 工業スクラップ回収率は60%程度で飽和状態

  • 回収コスト上昇により二次供給増も伸び悩む


3-3 地政学的リスク

  • 中南米やロシアの主要鉱山地域での政情不安

  • 輸出規制・関税強化が長期供給不安を助長

(図2:世界銀供給量推移と主要リスク要因マップ)

次章では、銀を「投資資産」としてとらえた際の魅力と金との比較を行います。


第4部:投資家目線──銀 vs 金


4-1 金との相対的魅力

  • ボラティリティ:銀=高(長期平均84ドル分散比) vs 金=低(1,900ドル前後)

  • 成長期待:再生可能エネ・テクノロジー需要が高い銀に分がある場合も

表3:金・銀の投資比較

項目

価格帯

1,800~2,100 USD/oz

30~40 USD/oz

年間ボラティリティ

10%弱

20%超

ETF純増残高

2,000トン相当

15,000トン相当

ポートフォ比率

5~10%

1~3%(高リスク層)

4-2 個人 vs 機関投資家

  • 個人投資家:1オンス=30ドル台は参入障壁低く人気

  • 機関投資家:分散ポートフォリオの中で採用進む

ここからは専門家の価格予測・シナリオ分析に移ります。


第5部:主要アナリストの見通し


5-1 価格予測まとめ

表4:2025年末/2030年末価格予測比較

予測機関

2025年末(USD/oz)

2030年末(USD/oz)

Sprott

40.00

50.00

WisdomTree

40.00

60.00

Gate.com

38.00~60.00

60.00~80.00

5-2 楽観/悲観のリスク要因

  • 楽観:脱炭素投資加速、電子部品需要想定超

  • 悲観:米国利上げ長期化、世界景気後退

最終章では、具体的な投資戦略と管理ポイントを提案します。


第6部:銀投資戦略のすすめ


6-1 投資スタイル別の向き・不向き

  • 短期トレード:EMA50超えのプルバック買い狙い

  • 長期積立:ドルコスト平均法で平均取得単価を平準化


6-2 ポートフォリオ組み入れ比率

  • 保守派:全体資産の1~2%

  • 攻め派:5%以上(高いボラティリティを許容)


6-3 リスク管理

  • 損切りポイント設定:直近安値の7%下

  • レバレッジ注意:CFDや先物は想定外損失リスクあり


おわりに:次に注目すべきポイント


  • 地政学リスクの変化:中南米やロシア鉱山への新規規制

  • 中央銀行・政策金利:米FRBの利上げ動向

  • 技術革新:次世代太陽光パネル・自動車用電子部品用途増


このコラムで示した分析・価格シナリオをもとに、読者ご自身の投資判断にお役立てください。現在、銀価格は年初の1オンス30ドル前後から夏にかけて38ドル台へ急騰し、過去14年ぶりの高値圏です。


2008年のリーマン・ショック後には12ドル台まで急落し、その後2011年に48ドルまで上昇したものの、以降は15ドル前後で長期停滞していました。


今回の上昇は再生可能エネ・EV需要の拡大が背景ですが、米国の利上げ観測や世界景気後退リスクが相場を冷やす材料です。金銀比価は80倍超と歴史平均(60~70倍)を上回り、ここ12カ月で約26%上昇と急ピッチなため、テクニカルな「買われすぎ」シグナルも点灯しています。


需給ひっ迫だけで永続的な上昇が続くわけではない可能性もあり、短期的な調整局面や利益確定売りが入りやすい状況です。過熱感が強い今のうちに利益を確定しするのも戦略の一つかもしれません。

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