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プラチナ価格上昇を支える具体的要因

プラチナのインゴッド
プラチナのインゴッド

前回の記事に続き、今回はプラチナ相場を押し上げる“需要”と“供給”、そして価格高騰の要因を徹底分析します。


1. 需要面:プラチナを動かす3つの柱


プラチナ需要は大きく⾃動車触媒、宝飾、投資マネーの3領域で構成されます。2025年上半期は全領域が同時増加し、需給ひっ迫に拍車をかけています。


1.1 自動車触媒・燃料電池需要

  • 欧州・米国での排ガス規制強化(Euro 7/Tier 3)で、自動⾞1台あたりのプラチナ積載量が+10~15%へ増加

  • 固体酸化物形燃料電池(SOFC)やハイブリッド車、市販EV向け触媒需要も急伸

  • 年間需要量:1,200万オンス→1,350万オンス(2025見通し)



1.2 宝飾需要

  • アジア・中東を中心に、Pt950やPt900製ジュエリーが復調

  • 高純度需要の拡大+リセール市場隆盛で、地金価格差(Pt1000–Pt950)が縮小

  • 年間需要量:660万オンス→700万オンス(2025見通し)



1.3 投資マネーの流入

  • プラチナETF(PPLT)純流入:+2.5億USD(2025 H1)

  • ウェルス・マネジメント部門が「金高値割高→プラチナ転換」を推奨

  • 実需に次ぐ“第4の需要”に定着しつつある


(表1)主要貴金属ETF純流入額比較(2024 H1 vs. 2025 H1)

ETF

2024 H1

2025 H1

増減率

PPLT

1.1億USD

2.5億USD

+127%

GLD

4.0億USD

3.2億USD

–20%

SLV

2.8億USD

2.0億USD

–29%

2. 供給面:制約が続く3大生産国


プラチナ供給の90%は南アフリカ、ロシア、ジンバブエ。各国の“ストレス要因”が同時に顕在化し、供給増の足かせとなっています。

生産国

シェア

2025 Q1リスク

南アフリカ

71%

大規模洪水・鉱山ストライキ・設備老朽化

ロシア

11%

西側制裁強化・高い輸送コスト

ジンバブエ

9%

政情不安・慢性的電力不足

その他

9%

増産余地が限られ、小規模鉱区が多い

(図3)主要生産国の操業率推移と生産量トレンド(2020–2025年)


2.1 リサイクル供給の限界

  • スクラップ回収率は70%を超えるも、地金需給逼迫で回収品が市場に出にくい

  • リサイクル全体供給は400万オンス→380万オンスへ微減傾向


3. マクロ要因:金利・ドル・地政学の共振


プラチナは「実質金利 ↔ ドル指数 ↔ 地政学リスク」の布陣の中で大きく揺れ動きます。


3.1 実質金利の低下圧力

  • 米10年物実質金利:+0.5%→+0.1%(2025 H1)

  • 金・銀比に割高感→投資資金がプラチナへシフト


3.2 地政学リスク

  • 中東情勢の緊張、南ア労使問題、ロシア制裁の長期化

  • 「安全資産」への回帰がプラチナ価格サポートを強化


まとめ


現在のプラチナ価格は、2024年7月時点の店頭価格(田中貴金属)で約5,800円だったのに対し、2025年7月には7,015円まで上昇し、約21%の値上がりを記録しています。2025年に入ってから特に急騰しており、南アフリカの洪水による供給障害や中国の宝飾・投資需要の急増が背景にあります。


このような急騰局面では、短期的な反動下落のリスクも高まります。実際、2025年第1四半期にはリースレート(貸借金利)が1%→13%に急上昇し、価格変動性が極端に高まっていることが確認されています。また、米国の関税政策変更や景気減速懸念も浮上しており、今後の価格下落要因となり得ます。

したがって、今は利益確定の好機といえます。2024年初頭に購入したプラチナを保有している場合、含み益が大きく、価格が高値圏にある今こそ売却することで、リスクを回避しつつ資産を有利に運用できるかもしれません。


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